第三十一回メールマガジン(2024年7月26日発行)
●●●目次●●●
1.ご挨拶
2.イオンビームスパッタリングについて
3.高ダメージ閾値光学部品
1. ご挨拶
梅雨も過ぎ去り、猛暑が続いていますが、皆様、体調を崩されておりませんでしょうか。
水分を取って健康管理にご注意ください。
さて、前回のメルマガではご希望者の方に海外展示会のレポートをお配りさせていただきましたが、本当にたくさんの方からご依頼をいただきました。ありがとうございます。
今回のメルマガは、久しぶりに光学部品の話をしたいと思います。
このメルマガでは、高出力CWレーザのネタが多いので、今回は短パルスレーザ用の光学部品についてお話ししたいと思います。
今回も最後までお付き合いいただければ幸いです。
2. イオンビームスパッタリング
イオンビームスパッタリング(IBS)法は大きな運動エネルギーを持ったイオンビームをターゲット材料に衝突させ、そこから抽出された粒子を光学面に堆積させるというコーティング方法です。
この方法では、真空蒸着法と比較して高いレベルの制御ができるため、高真空、高純度金属ターゲットと組み合わせることで非常に安定した成膜プロセスを実現することができ、堆積層の厚さと屈折率を正確にかつ高い再現性で制御することが可能です。
IBS法では非常に低い吸収損失のコーティングが実現できます。
更に、高度な光学モニタリングを組み合わせることで、高い品質のコーティングを提供することが可能となります。
3. 高ダメージ閾値光学部品
誘電体材料に高いピークパワーのレーザを照射すると、材料の物理的な光イオン化、衝突イオン化が発生します。
これらのイオン化プロセスは、材料のバンドギャップに直接依存します。
そのため、高ダメージ閾値(高LIDT)の光学部品を作る場合、より高いバンドギャップのコート材料を選択することが一般的です。
破壊的損傷と色変化
超短パルスレーザにおける光学部品の損傷タイプは2つあります。一つは破壊的損傷(LIDTと言われるもの)、もう1つは色変化です。
10ps以下の超短パルスレーザにおいては、破壊的損傷のほか、コーティングの色変化という問題が発生します。
破壊的な損傷が起こると散乱が発生し、色変化が起こるとパルス形状に影響を及ぼします。
いずれもやっかいな問題です。
高バンドギャップコーティングの落とし穴
高バンドギャップコーティングをすることで、LIDT(破壊的な損傷閾値)を高めることができます。
しかしながら、色変化は比較的低いフルエンスで発生します。
長時間の放射後に色の変化が発生し、それが原因となり破壊的な損傷が起こると考えられています。
パルス数が多くなると、高バンドギャップコーティングを使用したほうが、ノーマルの光学部品よりも低いフルエンスで色変化が起こることがわかっています。
以下図 a)は一般的なミラーの、b)は高バンドギャップコーティングを施したミラーのLIDT検査結果です。
緑色が破壊的損傷、灰色が色変化です。
パルスショット数が増えると耐えられるフルエンスが低くなっていることがわかります。
一般的なレンズの場合、100,000ショットで0.4J/cm2ほどの結果になっています。
高いバンドギャップコーティングを施したミラーの場合、一般的なミラーと比較すると、破壊的損傷に対して高い数値を示していますが、一般的なミラーが100,000ショットまで耐えた0.4J/cm2の場合、10分の1の10,000ショットで色変化が起きています。
ここからは宣伝です
弊社で取り扱っている超短パルスレーザ用光学部品は、色変化の問題を排除するためにプロセスを最適化されており、フェムト秒レーザ(500fs, 10kHz, p偏光)で0.7J/cm2、ピコ秒レーザ(10ps, 10kHz, p変更)で3J/cm2のダメージ閾値を保証しています。
以下に測定結果を示します。破壊的損傷が色変化の前に起こっているため、色変化のデータはありません。
ご興味のある方は是非お問合せ下さい。
編集後記
前回のメルマガで保護メガネのキャンペーン実施のアナウンスをさせていただきましたが、ほぼ不発に終わりました。
壊れたとか、紛失したとかがない限り、なかなか購入はないのでしょう。。。別のキャンペーンも考えていきます。
暑い日が続きますが、体調管理に気を付けて頑張っていきましょう。
今回も最後までご覧いただきありがとうございました。