レーザ加工のインプロセスモニタリングってどんなのがあるの?
レーザ加工のインプロセスモニタリングには、カメラを使った溶融池の観察、音響センサを使ったもの、温度測定、プラズマ計測、OCTによる深さ測定などがあります。
以下にご紹介します。
高速度カメラなどで加工点を観察し、溶融池のサイズ、形状、その他現象を確認します。
溶接や切断時における溶融状態を可視化することで異常を検知します。
加工時に発生する音波により異常や欠陥を検知します。異常時と正常時の音響を正しく把握する必要があります。
加工エリアの温度を計測します。溶接や表面処理に有効です。
加工時に発生するプラズマを計測することで異常を検知します。異常時と正常時の数値を正しく把握する必要があります。
光の測長技術を使い、溶接時のキーホール深さを計測します。
色々な技術があるのね。
どの技術が一番優れているの?
モニタリングしている内容が異なりますので、どれが良いということを一概に言うことは難しいです。全ての技術に一長一短があります。
当社では、これらの中でも安価にモニタリングを行うことができる温度計測に力を入れています。
レーザ溶接や焼き入れ等のアプリケーションにおいて、加工点の温度を高速にかつリアルタイムに計測します。また、フィードバック制御を行うことで加工品質を安定化します。
1波長で計測する安価なモデルと、2波長で計測する高性能タイプがあります。
溶接、焼き入れ、肉盛り、はんだ付けに最適です。
2色放射温度計は放射する赤外線のある2波長における比率から温度計測を行います。
材料の放射率が不明な場合でも測定ができ、またレーザ加工時に発生する粉塵や煙などの影響も受けにく、高い精度での温度計測を行うことが可能です。
放射温度計と測定対象の間に外乱がなく、視界がはっきりとしている場合は1色放射温度計を選定、それ以外の場合は2色放射温度計をおすすめします。
1波長温度計 | 2波長温度計 | |
---|---|---|
観察エリアと発熱エリアの比率 |
計測に影響する |
計測に影響しない |
放射率の設定 |
必要 |
不要 |
センサーと発熱エリア間の光学的ロス |
計測に影響する |
計測に影響しない |
レスポンス時間 |
速い |
遅い |
1波長よりも2波長のほうがよさそうだけど、レスポンスの時間が遅いんだね。
どうしても1波長と比較すると2波長は遅くなってしまいます。
ただ、当社で販売している放射温度計は2波長でありながら、他社の1波長よりも高速なモデル(最大80us)がございますよ。
加工時の温度がわかるのは嬉しいけど、加工品質を上げるためには、加工時の温度を正しい状態にしないとダメだよね。
はい、その通りです。
本製品は、温度計測を行うだけでなく、加工に適した温度にするために最大40us(1波長モデルの場合。2波長の場合は80us)ごとにレーザ出力を制御する機能が付いています。
下図左はレーザ出力を一定にしてLMD加工を行った結果、右は本放射温度計によりクローズドループ制御を行った場合の加工結果です。左はレーザ出力(緑)は一定ですが、加工点の温度(赤)は大きく変化していることがわかります。一方で右側は放射温度計で計測した温度情報を元にリアルタイムでレーザ出力を制御することで加工点の温度を一定に保っています。
おぉ、高速パイロメータを使ってクローズドループ制御をすれば、温度を一定にして加工することができるんだね。
温度を一定にするだけでなく、時間に応じて設定した温度になるようなレーザ出力制御も可能です。
この製品に搭載されているPIDコントローラって何?
PIDとはProportional(比例)、Integral(積分)、Derivative(微分)の頭文字をとったものです。これらの3つの要素を組み合わせて制御します。
比例、微分、積分・・・
もう少しわかりやすくならない?
以下にご説明しますね!
本パイロセンサーにはPIDコントローラが内蔵されています。これにより、レーザ加工点の温度を正しく制御するためにパイロセンサーからレーザへ出力制御信号を送ることができます。
偏差に比例して調整する制御です。偏差が大きいほど強く制御をかけます。
例えば、A地点からB地点を目指して出発したとします。この時下図の①の場合はゴールであるB地点に対して遠いため、もっと速く動いてくださいと制御しますが、②の場合はゴールであるB地点に近いため、ゆっくり制御されます。
偏差の累積を考慮して制御を行います。
制御開始時からの偏差を蓄積した値に比例して制御します。P制御で生じてしまう定常偏差を埋めることができます。
偏差の変化量に基づいて制御を行います。P制御やI制御では目的地に到達するまでに、オーバーシュートやアンダーシュートを繰り返しますが、D制御はそれにかかる時間を減らす役割を果たします。
先ほどの車の例で言うと、車のスピード変化量が大きいと、このままではB地点を超えてしまうと判断し、スピードを調整してくれる機能です。
仕様 | H309 | H316 | H318 |
---|---|---|---|
温度測定レンジ |
550~1200℃ 600~1400℃ 650~1600℃ 750~1800℃ 750~2000℃ |
250~800℃ 300~900℃ 350~1100℃ 400~1200℃ 500~1600℃ 600~1800℃ 700~2500℃ |
120~520℃ 180~800℃ |
波長 |
0.7~1.1um |
1.45~1.8um |
1.65~2.1um |
ディテクタ |
シリコン |
InGaAs |
InGaAs |
レスポンスタイム |
40us~10s |
||
不確かさ※1 |
計測値+1Kの0.5% |
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再現性※1 |
計測値+1Kの0.2% |
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放射率 |
0.05~1.200 |
||
透過率 |
0.05~1.200 |
||
スポットサイズ |
0.05~1.200 |
||
アナログ出力 |
2出力(0または4mA~20mA, 最大500Ω 分解能: 0.015%(16 bit) |
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シリアルインターフェース |
RS485、分解能:0.1℃ |
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I/O |
12ピンコネクタモデル: 3ポートデジタルI/O 17ピンコネクタモデル: 4ポートデジタルIN、2ポートデジタルOUT、1ポートアナログIN |
||
ディスプレイ※2 |
10桁LEDディスプレイ(温度表示および設定画面) |
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使用温度 |
0~65℃ |
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保存温度 |
-20~85℃ |
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湿度 |
結露無き事 |
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ハウジング |
アルミニウム、IP65、DIN 40 050 |
||
重量 |
650g |
※1: 放射率=1レスポンスタイム=1秒、環境温度=23℃において
※2: 12ピンコネクタモデルのみ
M311 | M322 | H311 | H322 | |
---|---|---|---|---|
温度範囲 |
600-1400℃ 650-1500℃ 750-1800℃ 800-2100℃ 900-2500℃ 1000-3000℃ 1100-3300℃ |
300-1000℃ 350-1300℃ 400-1600℃ 500-1800℃ 600-2300℃ 800-3000℃ 1000-3000℃ |
600-1100℃ 650-1300℃ 750-1400℃ 900-1800℃ 1000-2000℃ 1100-2200℃ 1300-2500℃ 1600-3300℃ |
350-800℃ 400-1200℃ 500-1300℃ 550-1400℃ 700-2300℃ 1000-2500℃ 1300-3000℃ |
波長範囲 |
チャンネル1: 930-1100nm チャンネル2:750-930nm |
チャンネル1: 1650-1800nm チャンネル2:1450-1650nm |
チャンネル1: 930-1100nm チャンネル2:750-930nm |
チャンネル1: 1650-1800nm チャンネル2:1450-1650nm |
検出器 |
シリコン |
InGaAs |
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レスポンス時間 |
<1ms |
80us |
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露光時間 |
<0.5ms |
<40us |
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不確かさ |
2500℃以下において測定温度の0.3%+2K 2500℃以上において測定温度の0.5% |
測定温度の0.5%+1K |
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再現性 |
測定値の0.1%+1K |
測定温度の0.2%+1K |
||
勾配比 |
0.8-1.2 |
|||
放射率 |
5-120% |
|||
透過率 |
5-100% |
|||
フィルファクター |
5-100% |
|||
アナログ出力 |
2つの設定可能なアナログ出力(0-20mAまたは4-20mA, 50Ω) 分解能0.0015%(16bit) |
|||
シリアルインターフェース |
RS232またはRS485 |
RS485 |
||
I/O |
デジタル入力:3ポート デジタル出力:3ポート アナログ入力(0-20mA) |
デジタル入力:3ポート(17inモデルは4ポート) デジタル出力:3ポート(17inモデルは2ポート) アナログ出力(17pinモデルのみ) |
||
ターゲット観察(オプション) |
目視ツール(保護フィルタ付き) レーザターゲットライト CCDカメラ |
|||
周囲温度 |
0⁻80℃ |
0-60℃(ファイバ部は-20-250℃) |
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相対湿度 |
20-85%(結露無きこと) |
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ハウジング保護等級 |
アルミニウム、IP65~DIN40 050 |
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重量 |
650g |
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CEラベル |
EU指示による |
C309 | C3162 | C318 | C311 | C322 | |
---|---|---|---|---|---|
温度範囲 |
550-1400℃ 600-1600℃ 750-2500℃ 900-3000℃ 1000-3300℃ |
250-1300℃ 350-1800℃ 400-2500℃ |
180-1300℃ |
600-1400℃ 750-1800℃ 900-2500℃ |
300-1000℃ 350-1300℃ 500-1800℃ |
波長範囲 |
チャンネル1: 700-100nm チャンネル2:870nm |
1450-1800nm |
1650-2100nm |
チャンネル1: 1750-930nm チャンネル2:930-1100nm |
チャンネル1: 1450-1650nm チャンネル2:1650-1800nm |
検出器 |
シリコン |
InGaAs |
シリコン |
InGaAs |
|
レスポンス時間 |
<1ms |
||||
露光時間 |
<0.5ms |
||||
不確かさ |
2500℃以下で0.25%+1K 2500を超える場合0.5% |
0.4%+1K |
0.5%+2K |
||
インターフェース |
USB2.0 |
||||
使用温度 |
0-60℃ |
||||
使用湿度 |
結露無きこと |
||||
ハウジング |
アルミニウム、IP65-DIN 40 050 |
||||
重量 |
1.2kg |