直接レーザ干渉パターニングヘッド

直接レーザ干渉パターニングヘッド

 

 

バイオミメティクスとは

自然界には35億年におよぶ進化の過程で備わった優れた機能を保つ微細周期構造が存在ます。バイオミメティクスとはそういった生体の優れた構造を模倣して技術開発に活かす技術です。
例えば、蓮の葉の表面はロータス構造といった特殊形状になっていて、水をはじく機構が備わっております。サメの肌の表面にはシャークスキンと呼ばれる構造があり、これは水中を低い抵抗で進むことができるという機能が備わっています。
当社では、この中でもナノ周期構造のような表面の微細な凹凸により、セルフクリーニング、アンチアイシング、抗菌、装飾、抵抗低減など高度な表面機能を、レーザにより超高速にかつ非接触で加工を行う技術をご提案します。

 

 

自然界の仕組みもすごいけど、それを模倣する技術って凄すぎる!

 

バイオミメティクスは様々な産業で利用されていますよ。

この加工を高速にかつ、半永久的な機能化をすることが産業界にインパクトを与えると考えています。

 

例えばどんなことに応用されるの?

 

応用例を以下にご紹介しますね。

 

 

バイオミメティクスの応用例
アンチアイシング

航空宇宙産業など多くの産業では、氷の堆積が深刻な問題を引き起こすことがあります。例えば、航空機の翼に薄い霜が付着すると、航空機の空力特性に影響を与え、最終的には燃料消費の増加、揚力の低下、抗力の増加を招きます。従来はこの対策として、地上では最大600リットルの高温の化学薬品を使用し、飛行中は燃料を使って航空機の部品を加熱するという、コスト的にも環境的にも喜ばしくない方法がとられています。
微細周期構造を形成することにより、環境に有害な除氷剤の使用量を減らし、乗客の待ち時間を減らし、エネルギーと燃料の消費量を削減し、加熱装置の小型化により飛行重量を減らすことができるなど、さまざまなメリットがあります。

 

濡れ性

 

固体の表面に液滴が触れると、液面と固体面がある角度を持ちます。これを接触角と呼びます。接触角θと固体、液体の表面張力との間には以下の関係があります(Yaoungの式)。

 

(固体の表面張力)=(液体の表面張力)×cosθ+(固体と液体の界面張力)

 

この接触角が5度以下になると超親水性、150度以上になると超撥水性と言われます。

 


 

自然界で、撥水性を持つ代表的なものといえば、「蓮の葉」です。右の写真にあるように、蓮の葉に落ちた水滴は玉状になります。
これを応用すると、例えば汚れがつきにくいキッチンまわりや、食品容器などに応用することができます。

 

 

防曇=結露防止

カーブミラーや自動車のサイドミラー、オートバイのフルフェイスヘルメットなどが結露により視認性を失うと交通上のトラブルの原因となり非常に危険です。微細周期構造により、結露を防止することで、コーティングのような耐久性を気にすることなく、半永久的に結露防止による視認性確保が可能となります。

 

 

コンタミ防止

太陽光を二酸化炭素の排出なしで電気に変換できる太陽光発電は、SDG’sの取り組みの一つとしても注目を集めています。
太陽光パネルは、太陽光をいかに多く取り込むことが、発電に重要です。そのため、パネルを保護するガラスは太陽光が透過しやすいようにコンタミの付着を防止する必要があります。
現在、太陽電池の洗浄には、年間380億リットルの水が使用されていると推定されています。これは、日本人全員が一日に使用する水の量よりもはるかに多い量です。
微細周期構造を付与することで、全く水を使用せずに受動的に汚れを落とすことが可能となります。(写真中央部に微細周期構造があるため、コンタミが付着していない。

 

 

 

接触抵抗低減

自動車の電動化が進むと、電気サブシステムの機能に対する要求が高まります。振動や環境影響などの過酷な条件下でも信頼性の高いプラグコネクションを使用しなければなりません。また、LIDARやレーダーシステムを使った環境検知のような分野では、極端な気象条件の下でもシステムが機能することが保証されていなければなりません。
マイクロ・ナノ構造を適用することで、電気プラグの接触抵抗を特定の接触シナリオで大幅に低減でき、プラグコンタクトシステムの信頼性が大幅に向上します。環境検知の分野では、結露や汚れの付着といった環境による影響を低減できるため、狙った表面構造にすることで、視覚的な性能を向上させることができます。

 

 

摩擦低減(トライボロジー)

固体表面が互いに接しているとき、それらの間には相対運動を妨げる摩擦が発生します。これら個体の表面に凹凸をつけることで、動圧効果により摩擦が低減します。また油溜めの効果も現れるため、潤滑油の寿命が伸び、摺動部品の長期的な摩擦低減が実現されます。
自動車の場合、エネルギーロスの3割は摩擦ロスと言われています。摩擦低減を実現することでエネルギー効率が高まり、燃費の向上が実現できます。

 

 

細胞制御

インプラントを体に埋入するとタンパク質が吸着し、その後細胞が接着します。表面形状をつけることで、このプロセスを活性化することができ、骨とチタンの結合を早期に安定化させることができます。
従来はサンドブラストやエッチングなどで行われてきましたが、DLIPでこのプロセスを超高速化、有効化することができます。

 

抗菌(アンチバクテリア)

多剤性細菌は抗生剤が効かなくなった細菌です。接触感染による2050年までの死者数は1000万人になると予想されています。
微細周期構造を形成することで、小さなバクテリアが凹に落ち、それ以上繁殖ができなくなったり、表面に付着ができなくなったりします。

 

 

光吸収(マッティング)

蛇の体表面には光を吸収する機能を持った周期構造があります。
これを模倣することにより、光を吸収させ、超黒色を得ることができます。
太陽電池の効率UPなどに応用されます。

 

 

光制御

蛾の目には光を反射しないという特徴があります。この構造(モスアイ)を材料表面に生成することで、反射防止コーティングを施さなくても反射防止された表面を生成することができます。ディスプレイの映り込み防止や太陽電池の効率化に期待ができる技術です。

 

 

加飾

アメリカ大陸に生息するモルフォ蝶は鱗粉の凹凸により、青い光だけを反射します。表面テクスチャにより光の反射を制御することができます。製品のコピー防止やデコレーション用途などに最適です。

 

 

微細周期構造の加工技術
 

バイオミメティクスによって、材料に様々な機能を付与することができることは分かったけど、これを加工するにはどんな方法があるの?

 

レーザ加工や非レーザ加工により微細周期構造を生成することが可能です。

代表的なものを以下にご紹介しますね。

 

リソグラフィ

例えばリソグラフィは微細周期構造を生成する技術の一つです。リソグラフィでは基板に塗布したレジストを電子ビームや干渉技術でパターニングし、現像、リフトオフ、エッチングのプロセスを経てナノストラクチャを形成します。(以下図)
このプロセスの欠点は複数の工程があることです。これにより周期構造を形成するまで長い時間を必要とします。

 

レーザ直接描画(DLW)

レーザにより材料を除去加工して微細な構造を作ります。出力や繰り返し周波数が高いレーザとポリゴンスキャナのような高速スキャニングができるヘッドを組み合わせることで高速なパターニングを実現できますが、レーザのスポット径よりも小さな加工ができないため、微細なパターンを要する機能を付与することができません。

 

レーザ誘起ナノ周期構造(LIPSS)

レーザを使った微細周期構造技術もございます。有名なのはこのレーザ誘起名の周期構造=LIPPS(Laser Induced Periodic SurfaceStructure)加工という技術で、材料の加工しきい値近傍のフルエンスでフェムト秒レーザを照射することでパターニングする技術です。これによりレーザの偏光と垂直方向に波長オーダーの周期的な溝が形成されます。
この加工では、レーザの小さなスポット径のエリアに周期構造が形成されますが、広い面積に周期構造を作る場合、この小さなスポットで塗り絵のようにビームをスキャンする必要があるため、時間がかかってしまいます。
また、パターンが限定されてしまうという欠点もあります。

 

サンドブラスト

サンドブラスト加工は、研磨剤をコンプレッサーの圧縮空気に混ぜて吹き付けるという方式です。これにより表面に凹凸をつけることができますが、規則性に乏しいのと、洗浄というプロセスが入ってしまうため時間がかかります。またこの加工は選択的に行うことができないので、加工したくない場所にはマスクを貼る必要があります。

 

直接レーザ干渉パターニング(DLIP)

入射するコヒーレンスなビームを2つ以上のビームに分岐し、加工対象上でそれらを干渉させます。得られた干渉パターンにより加工対象を直接加工し周期構造を形成します。

 

 

色々な技術があるのね。

DLIPが一番いいって言いたいんでしょうけど、その理由を教えて

 

比較表を作ってみましたので、見てみましょう。

 

リソグラフィ DLW LIPSS サンドブラスト DLIP

加工スピード

×

×

マルチプロセス

×

×

パターンサイズ

×

×

パターン均一性

×

金属

樹脂

×

ガラス

×

 

 

なるほど。DLIPは良さそうだね

 

DLIPは干渉縞を利用したパターニングを行います。一度に加工できる面積が大きいので、加工スピードが速いというのが特徴です。

レーザプロセスの良いところである、非接触加工というのも、非レーザ技術に対してのメリットとなります。

次の章でもう少し詳しく説明します。

 

 

直接レーザ干渉パターニング(DLIP)とは


DLIPは光の波の性質を利用したレーザ加工です。波は山と山が重なり合うと強め合い、山と谷が重なると弱め合うという性質があります。DLIPはこれを利用した新しいレーザ加工です。
分岐した複数本のビームを加工対象上で重ね合わせることにより、加工対象上に縞模様やドット模様のビームを照射することができます。DLIPではこの縞模様やドット模様のビームで除去加工を行います。

 

微細周期構造のサイズ(山と山のピッチ)は、使用するレーザの波長やエネルギー、照射角度により変わりますので、用途に合わせた加工が可能となります。
直接レーザ干渉パターニングはフェムト秒レーザを使用したレーザ誘起ナノ周期構造加工とは異なり、広い面積を一度に加工できるため非常に高速です。また、本加工はナノ秒レーザでも行うことができますので、装置全体のコストを抑えることが可能となります。

 

 

製品

干渉ビームの角度を可変できるタイプのDLIP加工ヘッドです。

角度を変えることにより、1台の加工ヘッドで様々な微細周期構造を生成することが可能です。

DLIPスキャナは内蔵されたガルバノスキャナにより干渉ビームをスキャニングすることが可能となります。

 

 

仕様
IR30.4 IR30.2 VIS30.4 VIS30.2 UV30.4 UV30.2

波長

1064nm

532nm

355nm

ピッチ

4.2-30um

2.5-8.5um

2.5-8.5um

2.5-6.0um

1.3-7.1um

1.3-5.0um

パターンタイプ

点/線

点/線

点/線

2ビーム効率

50%

100%

50%

100%

50%

100%

ワーキングディスタンス

40mm

対応レーザパルス幅

>1ps

寸法

410x160x470mm

重量

20kg

18kg

20kg

18kg

20kg

18kg

干渉ビームの角度を可変できるタイプのDLIP加工ヘッドです。

角度を変えることにより、1台の加工ヘッドで様々な微細周期構造を生成することが可能です。

パターン開発などの基礎実験に最適なモデルです。

 

 

 

仕様
IR50.4 IR50.2 VIS50.4 VIS50.2 UV50.4 UV50.2

波長

1064nm

532nm

355nm

ピッチ

2.0-11um

2.0-8.0um

1.0-6.0um

0.7-8.0um

0.5-6.0um

0.4-4.0um

パターンタイプ

点/線

点/線

点/線

2ビーム効率

50%

100%

50%

100%

50%

100%

ワーキングディスタンス

40mm

対応レーザパルス幅

>1ps

寸法

100x100x300mm

重量

3.5kg

干渉ビームをライン状にすることにより、大面積を高速にパターニングすることができる加工ヘッドです。

ヘッド設計時に設定した特定のパターンのみ対応します。

生成するパターンが決まり、量産を開始する場合はこのモデルが最適です。

 

 

 

 

仕様
IR2V IR2H VIS2V VIS2H US2V

UV2H

波長

1064nm

532nm

355nm

ピッチ

6-15um

10-20um

4-12um

5-10um

3-8um

3-6um

パターンタイプ

パターンの向き

垂直

水平

垂直

水平

垂直

水平

ワーキングディスタンス

60mm

対応レーザパルス幅

>1ns

寸法

300x125x75mm

重量

3-5kg

 

 

 

DLIP紹介動画

 

 

DLIPで作製した超撥水プレートのテスト動画

 

 

直接レーザ干渉パターニングヘッドで生成可能な微細周期構造

 

DLIPによる微細周期構造加工例